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年金試算に不適切な計算式を使用する厚生労働省
老後生活になくてはならない年金ですが、どれくらい支給されるのかという計算をする時に使われた計算式がどうやら不適切であったという報告があったそうです。

老後生活はただでさえ収入が無くなり、年金に頼らざるを得ない状況の中、このような不適切な扱いをしていたという情報を聞くと、誰しも自分の老後が不安になってしまうものです。

年金の支給額についての指標の中に「所得代替率」というのがあるのですが、その値を計算する時に不適切な計算式を使用していたということが明らかになりました。

年金試算をするのに、こうしなければならないという決まりは無く、年金を試算をするのも発表するのも、そして運営するのも政府なので、とやかく言う筋合いは無いのかも知れませんが、公に統計データを公開するのであれば、もう少し配慮があっても良いのではないでしょうか。

年金支給額の割合を計算する収入所得の基準が不適切

何が問題だったかと言うと「将来これくらいの年金はありますよ。」という政府の年金支給額の試算が(計算方法の間違い?それとも故意?)高く見積もられていたということです。

先の厚生労働大臣による国会の委員会での答弁は「現役世代の平均的な収入に対する年金額の割合(所得代替率)が高く算出されるようになっていた。」という内容のものでした。

ここに出てきた「所得代替率」という数値は、年金支給額が現役世代の収入の何割かを示す値のことであり、所得代替率の計算式は「高齢者が受給できる年金額」を「現役世代の収入」で割って計算されます。

要するに年金生活のときの収入は、現役世代のときの収入と比べて、どのくらいになるのかというもので、政府は年金給付水準の守るべきラインとして、この割合「所得代替率」は50%に位置づけられています。

問題になったのは、計算の対象となる「現役世代の収入」と「高齢者が受給できる年金額」のそれぞれの値を出すときに、片方だけ税金と社会保険料が差し引かれていたのです。本来2者を比較するのであれば、両方とも同じ処理をするべきです。

「現役世代の収入」の方からは、税金と社会保険料が差し引かれて、手取り収入になっている反面、「高齢者が受給できる年金額」は、差し引かれる前の総支給額になっていたのです。

例えば、あるスーパーが自分のところの商品は税抜きの価格にして、ライバル店の商品は税込み価格にして、うちは他より安いですよ!とチラシに記載して宣伝しているようなものです。

税引き前の値と税引き後の値を同じ土俵で比較して、割合を算出することなんて、厚生労働省の中にも間違っている、おかしいのではないか?と感じていた人もいたに違いありません。

大切なのは、年金を運営している当事者である政府の発表を鵜呑みにしないことです。たとえ国の機関である厚生労働省の発表だとしても、必ずしも正しいデータとは限らないということです。

あくまでも予想ですが、公共機関なので利益操作のためのデータのねつ造などは無関係だとしても、政府の施策の意向を与した統計データをあえて発表している可能性が無いとも限りません。

ここで気になるのは、日本の年金制度は世界的にみて、どうなのかということです。よく出来た制度なのか、まったくもってダメな制度なのか。そのようなことを気にしている人はほとんどいないでしょう。

もちろん年金制度自体が存在しない国もありますが、年金制度を運営している日本以外の国と比較した、民間の企業による調査結果があるので、参考までに以下に記載します。
日本の年金制度は世界的に見ると最下位に近い

この記事の本題とは離れますが、政府が発表している目標「所得代替率50%を確保する。」という根拠は何なのだろうかという疑問も沸いてきます。

「年金の支給額は現役世代の収入の50%あれば、老後の生活は安心して暮らせます。」ということなのでしょうか。

年金生活になった途端に収入が半分になって生活していけるのか



目標値を設定した根拠があいまいであるだけでなく、さらに目標値の計算方法にも間違いがあるという事実が明るみになり、「年金給付水準の守るべきラインは50%」と目標を掲げて、年金制度の健全な維持運営に努力しています。という政府の姿勢は一体何なのかと疑問に思い、不信感を募らせている人は少なくないことでしょう。

そもそも・・・この50%という数値を出すための計算式に間違いがあったということなので、もうこうなったら何を信じてよいのか分からなくなってしまいます。

現役世代の年金制度に対するイメージダウンは必須

計算方法に意図があったのかどうかは定かではありませんが、今回の件でますます年金制度に対する不信感が大きくなったのは間違いありません。

現役世代、時に若い世代の人たちは、それほど年金制度に対して、普段から意識している人はほとんどいないでしょう。

そんな中で、このような年金制度のマイナスイメージにつながる問題の露呈は、さらに年金保険の納付への抵抗感が増えてしまうことになりかねません。

ただでさえ年金支給額が下がっている中での今回の問題は、年金制度に対する不安感がさらに高まったことでしょう。

年金制度の安定した維持のためには、現役世代の年金保険の納付率の向上が至上命題ですが、今回の件で、年金を若い世代の年金不払い問題もさらに加速化されるのではないでしょうか。

実際に若い世代の人たちの中には、「どうなるか分からない年金なんて納めなくても良い。」計算してみると、納めた金額よりも、もらえる年金額の方が少なくなるから「自分のために使わないと損をする。」というような発言している人も見かけます。

年金制度をしっかり維持するためにも、若い世代の人たちにこそしっかり年金制度の必要性について周知していかなければならないのに、こんなことでは年金制度に対する不安感、政府に対する不信感がつのるばかりです。

意図的に数値を高く見せるために、このような計算式を採用しているのか?



故意か偶然かその真相は分かりませんが、これまで政府が発表してきた「所得代替率50%は最低限守る」という目標は、あまり期待しないほうがいいかも知れません。

このまま行くと、50%が40%に、そして30%にだんだんんと下がっていってしまう可能性もゼロではないでしょう。

年金に頼ることなく老後を迎えるための準備が大切

年金制度自体が、すでに崩壊しているという意見をしている人も少なくないのが現状です。

しかし、現状を憂うだけで何も行動していなければ、問題の渦中に引きずり込まれてしまうだけです。年金制度に対して批判するのは誰にでも出来ることですが、相手が相手だけに、批判していても何も解決しません。

ましてや批判がたくさん挙がることによって、年金制度が大幅に改革されるといった期待感はまったく無く、これから所得代替率が60%、70%へと上昇するとは到底思えません。

政府が運営していることなので、ある日突然「年金制度を維持することが出来なくなったので、来年度からは年金支給を中止します。」というような事態に陥っても、わたしたち国民は、その決定に従うしか方法はないのです。

それまで何十年に渡って、給料から厚生年金保険料が天引きされて支払っていたとしても、公平を期するためにすべての人を対象に年金支給がストップされ、決して例外は認められないことになるでしょう。

極端な話ですが例えば、年金制度を廃止することを決めた、国会議員、厚生労働省をはじめとした関係省庁の国家公務員、政府の関係者は、年金が無くなったとしても、何百万、何千万という退職金は支給されるでしょう。

年金制度が無くなるような極端なことは無いことを期待しますが、年金制度が今後どのようになっていくのかは、誰にも分からないことです。

はっきり言えることは、先行き不透明な年金制度だけに頼っていたえのではリスクが大き過ぎるということです。

どうなるか分からない年金制度だけに頼ることなく、自分の老後生活は自分自身で守る必要があるということを認識して、早めに老後の準備をはじめることが、何よりも大切なのです。